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大阪地方裁判所 平成元年(ワ)2666号 判決

大阪府交野市梅ヶ枝四三-七

原告

向井一

東京都千代田区霞ヶ関一丁目一番一号

被告

右代表者法務大臣

谷川和穂

右指定代理人

下野恭裕

辻浩司

龍神仁資

高袖富士夫

大阪市中央区淡路町二丁目二番九号

被告

株式会社ニチイ

右代表者代表取締役

小林敏峯

右訴訟代理人弁護士

小嶌信勝

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は、原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告らは、原告に対し、連帯して六一二円を支払え。

2  訴訟費用は、被告らの負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告は、平成元年四月二日、被告株式会社ニチイの交野店において、紳士靴下外一六点合計二万〇四二五円相当の品物を購入したが、その際、同店従業員に消費税相当分として六一二円を徴収された。

2  本来一般消費者は、消費税を負担すべき拘束は受けないから、右金員は同被告において不当に利得したものといえる。

3  被告国は、行政指導の名のもとに、被告株式会社ニチイに対し、前記消費税相当分の徴収を教唆した。

4  よって、原告は、被告らに対し、連帯して六一二円を支払うことを求める。

二  請求原因に対する認否

(被告国)

請求原因1の事実は知らず、同2は争い、同3の事実は否認する。

同被告は、税制改革及び消費税の運用の一環として事業者に消費税の徴収等に関して必要な指導等を行っているにすぎず、何等の違法は存しない。

(株式会社ニチイ)

1 請求原因1の事実のうち、原告主張の日時、場所において、同被告の従業員か、氏名不詳の顧客に対し、原告主張の商品を代金二万〇四二五円で販売し、同入から消費税相当額六一二円を加算した合計二万一〇三七円を受領したことは認め、その余は知らない。

2 同2は争う。同被告が顧客から受領した消費税相当額は、平成元年四月一日から施行された消費税法に基づいて受領しているものであり、不当に利得したものではない。

第三証拠

本件記録中の書証目録のとおりである。

理由

一  原告と被告株式会社ニチイ間においては、原告主張の日時、場所において、氏名不詳の顧客が紳士靴下外一六点合計二万〇四二五円相当の品物を購入し、その際、同被告の従業員が消費税相当分として六一二円を徴収したことは、当事者間に争いがなく、右事実に加え、同被告との間で成立に争いのない甲第一号証によれば、原告と同被告間において原告が右品物を購入し、あわせて消費税相当分として六一二円を同被告に支払ったことが認められる。また、原告と被告国の間においても、弁論の全趣旨及び右により真正に成立したものと認められる甲第一号証によれば、請求原因1の事実が認められる。

ところで、平成元年四月一日に税制改革法及び消費税法が実施されたことは、当裁判所に顕著であり、被告株式会社ニチイが原告から右六一二円を徴収したのは、右法令に基づくものであると推認することができるから、同被告の右六一二円の徴収は法律上の原因に基づくものであることは明らかであって、同被告が右金員を不当に利得したものとはいえない。したがって同被告に対する不当利得をいう点は失当であり、また、右が不当利得であることを前提とする被告国の違法の主張も失当というべきである。

二  以上の事実によれば、原告の本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担について民法八九条に従い主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 田畑豊 裁判官 園部秀穂 裁判官 田中健治)

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